―久しぶり。
裕子から聞いたよ。
元気してた?

前田結衣―



和則と別れて家に帰った。

コーヒーを飲みながら、考え事をしてた時。

前田からメールが届いた。


8年間もずっと好きだったのに

メールをするのはこれが初めて。

アドレスに子供の名前らしきものが入ってるのを見ると、

やっぱりあいつは母親になったんだって、実感が湧く。


メールが苦手な俺は


―久しぶり。
番号教えてくんない?

川端―


と、だけ送った。


メールはすぐ返ってきた。

番号だけが載ったメール。

俺は、ひどく緊張していた。

湯気のたたなくなったコーヒーを見つめながら、必死に電話をかけた時の話題を考えた。


「…はぁ。
情けねーな。」


そんな俺の独り言は

誰もいない部屋によく響いた。

残りのコーヒーを飲み干し

メールに載せられた番号に、電話をかける。


きっと、声震えると思うけど。