閃火高遠乱舞



 見てみると、新川がガッチリ・シッカリ掴んでいるのはクラウディオの手である。そのことから、引っ張られて落とされた、という推定が成り立つ。否、この満面の笑顔を見れば間違いないだろう。
「…何を考えてるんだお前は!!」
「端から濡れてんだし、いいじゃねぇか♪」
「私は濡れてない!!」
 クラウディオはガッと新川に掴みかかって咆えた。片方の手では難儀そうに滴り落ちる水滴を払っている。優美で高そうな衣服はししどに濡れ、宝王子は「弁償になったらどうしよう…」と一人焦っていた。
 そんな宝王子を知ってか知らずか、新川はまたもやいきなりガシリとクラウディオの両手を掴んだ。あまりの剣幕に、クラウディオをはじめとした一同は動きを止める。
 そのまましばらく沈黙が続くと。
 新川が華やかに笑った。
「悪かったな。確かめるためとはいえ、女なのに乱雑に扱っちまった」
 その言葉に、
ピシリ…
 と空気が固まった。
 ――まず我に返ったのは、当人とトウヤである。
「ななな…何で分かった!?」
「スゲーな、オイ!俺も再会したときはミカエルに言われるまで判んなかったんだぞ!?」
 大山は恐る恐るクラウディオを上から下まで見てみる。切れ長の澄んだブルー・アイ。さらさらの金髪と、西洋人特有の白く滑らかな絹のような肌。背はすらりと高く、細い身体はスレンダーだ。
 大山と林は脳内で絶叫した。
 ――何ぃ…!?
「ウッソぉ……」
 一瞬でも見惚れてしまった、と大山はショックを受けてフラリと力なく屈みこむ。そんな大山を同情いっぱいに慰めるのは林だ。