城は、雄大な山に挟まれた場所にある。赤く熟れた果実や木の葉を見ると、すでに秋の香りを漂わせている。今まで見てきた場所とは違い、美しく清潔で、電燈まで灯されていた。危機感はまるでない。
宝王子はそんな有様に呆れ、そして怒りが沸き起こる。嘗められているのだ、日本は。たったあれだけで返り討ちできる、と思われるくらいには。
柳から馬を譲り受け、跨る。後方には「疾風」が控えていた。突入間近である。
そこに、新川水軍「雷迅」が到着する。林は帝のいる本陣守備、大山は突入中の敵本陣を包囲する任についている。中に入るのは、「疾風」と「雷迅」の役目だ。
宝王子が馬の脇腹を蹴ると、新川が走り出す。兵たちは内部へ、二人は上を目指す。
石段を駆けのぼり、追いすがる北朝鮮兵を叩き落とす。殺してはいないだろうが、しばらくは動けまい。新川は勢いよく蹴飛ばして、無理やり道を開けさせている。
しばらくそんな調子だったせいだろうか、北朝鮮の追撃の手が緩む。将軍への忠誠心はもとから薄く、従わねば死ぬために誓わされた者が大半なのだ。ここまで来れば、日本の勝機は大きい。彼らは日本に、金一族からの解放を願い、託しはじめていた。
大きな石造りの扉。重そうで冷たそうな、大きな壁。横には立派な銀細工の燭台に、蝋燭の光が風で揺れている。ここに、「将軍様」と呼ばれる金清日をはじめとした、金一族がいる。
