閃火高遠乱舞



 馬の蹄が高い音をたてる。石で作られた門をくぐり、中庭を通る。柱も噴水も朽ち、草が生い茂っていた。
 本館前に、大山がいた。
「策が変わるって」
「だろうな。…にしても、帝はさすがだな」
 感慨にふけったように頷く。帝は、北朝鮮が退いたと知らされたときから、すでにこれを読んでいたのだ。頭のつくりが違うのではないか、と思うほど意表を突いてくる。
 大山と共に、宝王子は広い場所に出た。大理石の机は、さすがと言えるほどキズがついていない。会議のために、わざわざ拭いたのだろう。そこには、すでに全員が揃っていた。爆風に巻き込まれたのは「疾風」だけだったらしい。俊足部隊の特性が裏目に出てしまった。
「戻ったか」
「はい。…まぁ爆風で怪我したヤツはいますが」
 宝王子は新川の横に馬をつけた。騎馬隊は宝王子の部隊と本陣しか持たないため、帝以外は徒歩だ。
 帝は卓上に向けていた視線を上げた。
「あんなものを使ってくるとはな…全員、暗天星華は使えるな?」
「相手の兵器は鉄製の筒で、その中に発生させた電撃をため込んで一気に発射するシロモノのようです」
 大山が報告文を読み上げる。あの混乱状態の中、きっちりと調査させていたらしい。やるべきことは、しっかりとこなしてくる。さすがは将軍だ。
「よっしゃぁ、ソイツをぶっ壊せばいいんだな?」
「そうだ」
 帝が頷くのを確認して、宝王子は「疾風」が集まっているところに引き返す。速さならば、敵味方の内で最速である自信がある。宝王子は挨拶もそこそこに、部屋から退散した。
 乱雑なホームに、「疾風」は並んで待機していた。彼らは宝王子の姿を見つけると、勢いよく身を起こした。それぞれの目は、先ほどの屈辱から、強く輝いている。
 宝王子は帝からの指示を話す。
「相手の兵器を破壊する。その後で、じっくり金一族を討つぜ!!」
 喚声が上がり、兵たちは馬に跨った。