宝王子は長く厳しい冬の鍛練の結果、かなりのレベルまで暗天星華が使えるようになった。舞剣術「桃花千本桜」とのコンビネーションまで出来るようになっている。ドイツがどのくらいの強国かは分からないが、以前のような屈辱は味わいたくはない。宝王子は冷静だった。
新川と示し合わせた合図によって、怒涛の勢いで急な傾斜を駆け登っていく。馬を巧みに扱い、部下たちを率いて。
「俺は日本陸軍『疾風』軍団長宝王子神楽!!かかってきな!!」
二本の刀を抜きたち、前方を固めるドイツ軍を蹴散らしていく。その隙を見た彼の部下たちが、さらに追撃をかける。
呆気ないものだった。
しかし、そんなときには必ず裏があるものだ。過去の戦闘と同様に。
そして、それは当たっていた。
前方に大軍勢が出現したのである。しかも、掲げている軍旗はドイツ本国のものだ。援軍にしては、異様な早さだった。
「やっぱり俺たちの動きは分かってたみたいだな…」
相手はあのグウェンダルである。いつまでも思い通りには動けるとは、端から考えていない。
黒い髪をなびかせた青年が、この軍団長だろう。
「俺はライザ・エリシュールだ。ま、よろしくな」
「…俺は宝王子神楽だ」
ライザの手に武器らしき影はない。しかし、かと言って文官にも見えなかった。
宝王子は刀を構える。油断するつもりは、ない。
「いくぜ!!」
ライザは拳を振り上げた。
