今でも愛しい人



次の日からあたしの魂は抜けたようになってしまった


「梨佳ー?」


クラスの友達が話し掛けてくれても何も答えない


ずっと空を見っぱなし


「梨佳、最近変だよね~」


美怜が呟く


それでもあたしの心には届いていなかった


「梨佳ー?」


瀬理があたしの目の前で手を振る


「...なに?」


「あ、ようやく喋ったー!!」


いつしか、あたしが話すのが珍しくなっていた


気づいたら田中とも何もなくなっていた


いわば自然消滅?


ありがたいと思ったよ


今のあたしに『別れる』なんて言葉は辛すぎるから


輝とのことに繋がってしまうから


「梨佳、迎えに来たぞ」


そして毎日のように竜哉があたしを迎えに来てくれた


「梨佳、いい加減受験勉強しろよ?」


「...うん」


竜哉にカバンを持ってもらって帰宅する


「そんなんじゃ、公立に受からねえからな?」


「...うん」


そんな言葉、今のあたしには通じないよ


「...ダメだ、届いてねえな」


その通りです、竜哉君