即席のパスワード




どっくどっくばっくばっく、と。

尋常じゃないほどの働きを見せる心臓に、嗚呼私そろそろ死ぬかもなんて。いや、本気で思ったけどね。



泉くんは、時々こうやって予測していない爆弾を投下してくるから。

今回も気紛れかもしれないけど、どうしよう。嬉しくて仕方がない。




と。


「…あ。」

“ん?”

「……あの、泉くん…。」

“なに、どうかしたの?”



嗚呼、なんてついてない女なんだ私は。

頭に浮かぶのは、梓の顔と何度も釘をさされた「絶対に忘れないでね」という言葉。


言いたいことがあるなら早く、と面倒そうな声音で急かす泉くんに私はぼそりと告げる。




「デート…無理っぽい、です…。」

“……。”

「あの、今日は梓の家に泊まって…それから、明日は中学の同窓会があって…」

“(…聞いてない。)”

「…ほんと、ごめんなさい…。」