からかっているんだ、私彼女なのに扱いが酷いと前から思っていたけど。
今日の今日は許さない、なんて心の中で毒を吐いてもそんなものは泉くんを前にすれば無かったも同然。
「なに、怒ってるの?」
「……ふん!」
「ごめん、仁奈。」
「…」
「仁奈が可愛いから、つい苛めたくなるんだ。」
瞬間、私の身体は腰に回った泉くんの腕によって抱き寄せられる。
顔は胸板へと埋まり、どきりどきりと暴出す馬鹿正直な心臓が憎い。
泉くん、と小さく名前を呼びそっと私も彼の背中に腕を回す。
「……お料理、もっと頑張る。」
「うん。楽しみにしてる。」
見上げた我が彼氏様の顔は、とても優しかった。結局意地悪言われて怒ってても、彼にかかればどうだってよくなる。
゙If it is for him, it tries hard.゙
彼のためなら努力します。
『泉くん、泉くん。』
『なに?』
『晩ご飯、泉くん何食べたい?』
『……じゃあ、』
『仁奈で。』
頬を赤く染める彼女を苛めていいのは俺だけ。