即席のパスワード




それでも、私だって、私だって一生懸命…!


「もう、そんなに言うなら食べなくていいよ!」



なんて。

そんなこと、私みたいな小心者が言えるわけないし。散々文句をこぼしながらも全部食べてくれるから更に口には固くチャックをしてしまう。


だ、け、ど!!




私だって怒るよ!今日の泉くんの意地悪は度を超えてると思うもん。

…と、いうわけで。


私は憤怒しているのである。そして話は冒頭へ戻り。



私はキッチンで頬の熱を冷ますことに集中しすぎて気が付かなかった。


「仁奈」と私の名を囁く甘い声が直ぐ後ろから聞こえ身体は硬直。心臓の音がどんどん大きくなって速度を速める。

や、やばい…!



「仁奈?」

「っ――――、」

「仁奈、ってば。」



くすりという音が聞こえた気がしたけど、気のせいだろうか?そう思って振り返った私の視界に映る泉くんの口角は意地悪く持ち上げられていて。

彼はきっと私がドキドキしているのに気付いて確信してやっているんだ。