一向に泉くんは私の背後から離れようとしない。

どうしたんだろうか、具合でも悪いのかな?心配になり泉くんの顔を再び覗き込んだ私はすべての動作をストップさせてしまう。



わけは泉くんがあまりにもじっと私を見下ろしていたから。どきりと高鳴る胸の感覚は幾度となく経験してるけど、こういう不意打ちは苦手だ。


泉くん?と本当に小さくなってしまった声で呼びかけると、私との距離を一歩詰めることによって返事を返してきた。



極力口で伝えようとしてほしい。こういうのは心臓に悪い…。




「仁奈、甘い香りするね。」

「え?…あ、うん。」


不意に泉くんがそんなことを言い出すからきょとんとしてしまうけど、すぐに香水のことだと分かり梓がくれたと笑う。