泉くんのその言葉に、私はふるふると首を横に振った。すると泉くんは、私の頬を指で撫ぜると真っ直ぐに私を見据えてくる。


どくん、と一々大きく跳ねる心臓が煩わしくて一つわざとらしく咳をしてそれを紛らわす。



いくら胸が張れないなんて言っても、相応しくないんじゃないかなんて思っても、私の頭に泉くんを諦めるなんて考えはどうやっても浮かんでこない。

だって、そんな簡単な思いじゃないんだ。



「泉くん、すき、」

「うん。」

「諦めるなんて、無理…!」

「当たり前でしょ。」



俺が捕まえたんだから、と悪戯っ子のように微笑んだ泉くん。

その笑顔があまりにも色気を放っているもんだから私の頬は瞬時に紅潮してしまう。わあ、顔がアツイ。


「仁奈が胸張れること、ちゃんとあるから。」

「…なに?」








「俺を、好きって気持ち。」


――――普段、泉くんはあんまりキスはしてくれない。

今日の泉くんは、キス魔になってしまったみたいだ。