「仁奈、教えて?」
「あ、」
口を開きかけて、私はストップする。おかげで口は半開きのままだ。
だって、ここで私が言ったら泉くんは多分植村さんへ何かしら言うと思う。でも、そうしたら、泉くんのこと本気で好きな植村さんの気持ちはどうなるの?
私は、泉くんの彼女だって胸も張れない。
そんな私に、泉くんに助けてもらう資格なんて…ない。
「…仁奈、聞いて。」
と。
泉くんの静かな声に私は逸らしていた視線をもう一度浮上させる。
「あの時、あんなこと言いだした仁奈の様子に気付いてあげられなかった俺が悪い。」
「…ちが、」
「ごめん…。」
…違う。悪いのは全部私なのに、泉くんが謝る必要なんてないに…。
私は泉くんの胸に自分の額を押し付け、一生懸命に腕を回し抱きしめ返す。
仁奈、と私を呼ぶ泉くんの声が優しくて。涙を堪えることが出来ない私は泣き虫。
「怒って帰っといて、なんだけどさ。」
泉くんは少し困ったように眉根を寄せて微笑み。