そっと、私の頬に泉くんの指が触れる。それは涙を拭ってくれて、次の瞬間には私は泉くんの胸の中に閉じこめられていた。
びっくりして、一時停止。それなのに涙は溢れ続けるものだからすごく厄介。
「仁奈、ごめん。」
「泉、くん…?」
泉くんはただひたすら私をきつく抱きしめる。それは、籠の中の鳥を逃がさないように己自身の愛の虜にしてしまうような、そんな抱擁。
どきり、どきりと跳ねる心臓。私もそっと泉くんの裾を掴んだ。
「……植村先輩と、何かあった?」
「っ、」
名前を聞いて過剰に反応した体。いや、泉くんの口から植村さんの名前が出てきたことへの不安かもしれない。
どうしよう、泉くん、怒ってるのかな?
抱きしめられてるため顔は見えないが、明らかに私の真意を探ろうとする声色にびくつく私。
仁奈、と呼ばれて。私はしばし沈黙を置いて従順に「はい」と返事を返した。
ゆっくりと見上げた泉くんの顔。
「仁奈の傍に一番いたいのは、俺。」
「…、」


