「あの子のことだし、あんたに何か言って怒られたかなんかで落ち込んでたんだろうけど。」
…勘が鋭いにも、度があるだろ。確かに先日仁奈を怒って帰ってしまったが、仁奈の部屋を出てから猛後悔。
なにも帰らなくても良かった、と。恐らく(いや絶対)泣いているであろう仁奈の姿を思い浮かべて胸が痛んだ。
でもそこに、俺の馬鹿げたプライドってものもあって。
仁奈の元へ戻ろうとしていた足を、自宅へと向けたのだ。
――――あの時、気付けなかった俺が一番悪い。
「あんた、仁奈があの女に何言われたか知ってんの?」
「あの女って、誰だよ。」
そう問うた俺に三上は溜め息混じりに明日本を貰う約束をしていた先輩の名を口にした。
……は?嘘だろ、とは言わなかった。
少なくとも、先輩が俺に気を持っていたことは気付いてたし。先輩に会ってから、仁奈の顔が微妙に強ばっていたことにも気付いてた。
けどそれは、緊張とかからだて思っていた。


