胸にズキリ、とした痛みが走る。その痛みは、我慢すれば我慢するほどに大きなものとなり、涙腺を刺激し始める。
「仁奈ちゃん、お願いがあるの。」
「……な、んで、しょう?」
植村さんは、ティーカップを持ち上げ自身の口へと運ぶ。
そして、一口紅茶を飲み込むと。私を真っ直ぐ見つめ、口の両端を綺麗に持ち上げ。
「相原くんと、別れてほしいの。」
そう、堂々とした態度で言い切った。
キュッと真一文字に結んだ唇。
ズキリ、ズキリ。
胸の痛みは増すばかり。心臓の上辺り、服を掴んだ私は必死に涙を堪えながら呟く。
「嫌、です…。」
植村さんは、一瞬吃驚したように目を見開き。
次の瞬間には、何故か楽しそうに微笑んだ。
「まあ、当たり前よね。」
「………え?」
植村さんの考えていることが、まったくよめない。首を少しばかり傾けた私へ植村さんは微笑する。