「美味しい…。」
「良かったわ。」
…油断していた。口に広がる甘さと植村さんの笑顔が、私の警戒心を緩ませていたのかもしれない。
植村さんは自身の紅茶を一口飲み、受け皿にそれを置くと。
「先日は、相応しくないとか、暴言ごめんなさいね?言い方を間違えたわ。」
「(…………あれ?)」
確かに、謝罪をしてくれている。いるんだけど、…チラリと見上げた植村さんの顔には妖艶だが怖さしか感じられない笑みが浮かんでいた。
嗚呼――…、
「仁奈ちゃんに相原くんは勿体無い、とでも言えばよかったかしら。」
この人は、完璧に私を敵視している。
丁寧な言い方に変えてきても、その言葉たちは私の心を押し潰そうとすることには変わらない。今、それに必死で耐えているところだ。
「先日にも言ったけど。私、相原くんが好きなの。貴女よりずっとずっと前から。」
「……。」
「貴女の知らない相原くんのことを、私は知ってるわ。」