――…翌日。
泉くんと喧嘩(正しくは私が呆れられた)をしてしまった私は、一人大学からの帰路を辿っていた。
「こんにちは。」
と。
私に向けられた声の先を見上げれば、…紅がのる唇で緩く弧を描いている姿。私を捕らえる双眼は相変わらず鋭い。
「植村、さん…。」
口から出た声は情けないほど震えていて。
体が強張る私を見、植村さんは怪訝そうにも満足そうにまた、笑う。
「今日は、一人?」
…その言葉の意は、おそらく泉くんがいないことを指している。
頷いた私を見た植村さんは、その鋭い目をギラつかせた顔をなぜか柔和な笑顔を浮かべたものへと変えたのだ。
「お茶でもしない?この前のこと、謝りたいの。」
「…え、」
あまりにも突然な、意表を付いて来た言葉に目を見開き呆け顔になる私。植村さんは、クスリと微笑み。
「それに…仁奈ちゃんと、゙お話゙したいの。」