即席のパスワード




「泉くんは、…ただの後輩?」

「…何が言いたいの?」


低い声が鼓膜を揺らす。声の中には明らかに゙苛立ぢが混ざっていて、それに気付いただけでもう目頭から熱いものがこぼれそうになる。

ウルサイ、ウルサイ、ウルサイ。


私の心の中、私の声、私の心音、私のすべてがウルサイ。




「…泉くん、植村さんの方が好きだったりする?」

ウルサイ…!


「私より、大人だし。綺麗だし。頭もいいし。泉くんのこと知ってるし。」

ウルサイ!


「私なんかより、植村さんの方が魅力的だし、」

ウルサイッ…!!!




はあー。
深く重々しい溜め息が私の脳内をストップさせる。それは勿論泉くんのもので。

シンプルフレームの眼鏡を外しテーブルに置いた泉くんはソファから立ち上がり。



「いい加減にしろよ。」


そう、呟いた。


「仁奈は俺を疑ってるの?好きって言葉、信じてないの?」

「ッ…、」

「…今日はもう帰るよ。」