泉くんの高校時代の先輩らしい、植村さんは大人の女性ってカンジで。

弧を描く唇は魅惑的。思わず見惚れてしまいそうになる。



「でも、ほんと久し振りね。相変わらず綺麗だし。」

「何言ってるんですか。」


泉くんは至って普通(そりゃあ、微笑んではいるけど)。その時、泉くんの携帯が鳴り「ちょっと」と言って泉くんは少し距離を取り通話を始める。




「仁奈ちゃん、どこの高校?」


と。
突然振られた問いかけにまた体を強ばらせながら、自分の出身校の名を告げる。

へえ、と呟くように言った植村さんは、泉くんに背を向け私の前まで歩み寄る。


そして突如として、先程までの柔和な笑みを消し私を睨みつけたのだ。



品定めするような瞳は鋭く。体が震えた。

ぐっと近寄った口元は、私の耳元まで距離を詰める。



「貴方が相原くんの彼女?笑わせないで、有り得ないわ。」

冷たい声が私の鼓膜を叩く。