が。
そう感じたのは一瞬だけで。視線は柔らかなものへと変わり、口元は柔和なそれを形作る。
「もしかして、相原くんの彼女さん?」
「…あ、え、」
「ええ、そうです。」
私が答えるよりも早く、泉くんが女の人の問い掛けに答える。それよりも、泉くんが直ぐに肯定してくれたことが嬉しい。
あ、にやけそうだ。
「初めまして。相原くんと高校で一緒に委員会やってた、植村綾乃です。今はここから近くの会社で働いてます。」
小さく会釈をした植村さんの動作は一つ一つが上品で綺麗。
それを見ていた私は、ハッと我に返り、口元を引き締め直し急いで言葉を吐き出す。
「…間中仁奈です!泉くんと同じ大学で。よ、よろしくお願いします…!」
「そんな畏まらないでいいわよ。仁奈ちゃんよりも2つ上ってだけだから。」
細い指を自身の髪に通し、手櫛で髪を直す植村さん。やっぱり、さっき感じたあの゙威圧的な瞳゙は気のせいだったのか。