綺麗な茶色をゆるく巻いたロングの髪は艶やかで。紅(あか)がのる唇は凄艶に弧を描いている。
のは、数十分前、偶然再会した泉くんの高校時代の先輩である。
そして、この状況。
そんな美人の先輩が、私にとってはとても威圧的で怖い。
理由は――…、
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――――――
「あら、相原くん?」
と。
私と泉くんが二人で歩いていた時。すれ違いざまに、女の人の声がハッキリ泉くんの名字を呼んだ。
振り返り、相手が分からないのは当たり前だが私だけ。泉くんはああ、と呟き。
「植村先輩、お久しぶりです。」
「以前会った時ぶり、かしら?」
「そうですね。」
ふふっと綺麗に口角を引き上げ弧を描いた顔をじーっと見つめていた私。
そうしていれば、女の人の視線がゆるりと私を捕らえる。その瞳が鋭く尖ったもののように感じ、身を強ばらせた。