「付き合ってよ。」
「…はい。」
「仁奈、って呼ぶ。」
「…は、い。」
カカカッと赤くなった頬を隠すように俯いた私。泉くんは繋がれた指にまた少しだけ力を込める。
「…感謝、しなきゃな。」
ぼそり、泉くんが呟いた声は周りの行き交う人々の喧騒に掻き消され、私の耳に届くことはなかった。
――――…そして、今。
「ねえねえ、泉くん。」
「……なに。」
ソファに座り本を読む泉くんへ、キッチンから視線を送りながら声をかける。返ってくる返事は素っ気ないものだが、返してくれることが嬉しいからいいや。
「私が告白した時、どうして泉くん、私がそう言うって分かったの?」
チラリ、視線だけで私に視線を向ける泉くん。眼鏡の下の綺麗な瞳が上目遣いで私を見る。鼻血出そう…!
「……ああ、それは…」
――仁奈が泉を追い、カフェを飛び出した直後。泉の携帯が着信を知らせた。