「っ、相原くん…!」
長い足を有効活用してどんどんと先を歩くその後ろ姿にやっとの思いで追いつき、私は乱れる呼吸と共に声を絞り出す。
くるり、振り返った彼はゆるく艶やかな笑みを浮かべ「何か?」の一言。
私の心臓は、意外にも落ち着き払っていて、ただ頭の中はパニック状態だ。
「あ、の…いきなりですが彼女、いますか?」
「…いない。」
「…先輩、って人と、梓が一緒にいるの見たって言って…、」
「偶然。」
「…えっと…、先日会ってから、あー…違う。お友達?になりたくて、」
…自分で思うが、なんて不信感を抱かれそうなキョドり方だろう。てか、私自身何言ってるのか分からなくなってきた…。
「随分と回りくどいことするんだね。」
鼓膜に響いたクスッという音の後に続いた言葉。す、と。私の髪に指を通したのは、勿論相原くん。驚き跳ねるように顔を上げると、とても意地悪に笑っていた。


