私の思い込みでなければ、この人の通話相手は梓なのだろうか。
まじまじと目の前の男の人をもう一度見て、思った。
「(梓と同じ高校の制服だ。)」
チャコールグレーのブレザーは、一緒に来た友人が着ていたものと同じもの。ということは、やはり通話相手は梓?知り合いなのかな?
「ああ。そうだ、一階のロビー出てから北側の、…分かったじゃあ。」
自然な動作で通話を終了させた男の人は、ゆるりと微笑み私を見下ろす。その笑顔が綺麗だったから、ついついまた見惚れてしまったではないか。
と。
「仁奈ー!!」
バタバタと人の波を押しのけて、痛ぇと睨む人に倍の恐ろしさで睨み返し私に駆け寄る親友の姿。
こ、怖すぎる…。
親友ながらに、この時ばかりは本気で身震いしてしまったのは秘密だ。
「ごめんね仁奈、大丈夫だった!?」
「う、うん。平気。」
「相原もありがとう。」
「……別に。」
相原、とは、この人の名前かな?それにしても、さっき見せてくれた柔和な微笑を欠片も思わせない真顔に変えた相原くん。


