「梓ー…、」


返答が返ってくることはないと分かっていながらも、一人その疎外感を感じる空間に親友の名前をこぼす。

ついには涙腺まで緩んできた。大学で泣くなんて、有り得ない。



拳を握り歯を食いしばり、必死で涙を堪える私。ここで泣いたら、皆に気にしてもらえて逆に梓と再会できるかな…?いやいや、それは羞恥に耐えられない。


はあ、と。行き場のない溜め息をもらし壁にもたれて俯く、と



「どうかしたの。」


ふわり、シトラス系の香水の香りが鼻を掠めた。頭上からかけられた声は低めのロートーン。

質問してるけど疑問形でもないし、少し無愛想ではあったがその甘い声が耳に残る。


ゆっくり俯いていた顔を持ち上げた。チャコールグレーのブレザーまで辿り着いた視線の先を、一気に上へ。


と。
正直、驚いた。



驚いたと言っても、こんな人いるのかって意味で。あれ、言い方おかしいかな?

正確にばこんな綺麗な男の人がいるんだな゙って意味。