これは、今から数年前。私と泉くんが出会ったときのお話。



――…あれは、(現)私が通っている大学のオープンキャンパスに、梓にお願いして二人で見学に行ったとき。

大学内に入って驚いたのは、その構内の大きさ。そりゃ、大勢の人が通うわけだし。高校の校舎とは比べ物にならないなんてことは当然なんだけど。


取りあえず驚きが大きかったのだ。



「思ってたより、結構大きいし綺麗じゃん。」

「だねー。」


ふーん、と少し興味を示したような言葉をボソリと呟いた梓。よかった。



私と梓は、ゆっくりとキャンパスを見て回りそろそろ帰ろう、としていた頃。

大学内は結構な人でごった返し、現在地を理解することが難しい。背の高い梓の後ろ姿を見失わないように必死で着いて歩いた。




…歩いた、が。


「(…あれー…。)」



見事に迷子になってしまった。なんて馬鹿をしたんだ私は。


できるだけ人が少ない階段の横に抜け、周りを見回してはみるが当然梓はいない。