「ねえ、何でこんなんもまともに解けないの?」
「……。」
トントン、と。
ガラステーブルの上に広がる参考書を指で叩きながら吐き出された溜め息が重い。
溜め息通りの「こんなんも解けないなんて、今まで何してきたの?」と言わんばかりの呆れ顔に本気で泣きそうになる。
ノートに落とす視線はひたすらに数式を見つめるけど、頭の中はぐるぐるして全然答えが見いだせない。
白いマットの上に座り込み課題と必死に向き合う私。
と。
机を挟んで、二人掛けのソファに浅く腰かけながら、前のめりで私の課題を覗き込む綺麗な男の人。
「ほら、次。」
「…分かんない。」
「はあ?馬鹿なの?」
遂に言葉にされた…!とは言っても、さっきから顔が全力でそう言っていたけど。実際に声に出された言葉だとそのダメージ力は全然違うんだよ。
シンプルフレームの眼鏡をクイッとかけ直した指は男の人のくせに細いし、長いし…綺麗。
顔なんて、一つ一つのパーツが端正でかっこいい男の人ってこういう人のことを言うんだって思っちゃうくらい。