『そんなに慌てて走るなよ〜転ぶぞ〜』
僕の幼なじみは急ぎ走りで僕の前にいる。なにも其処まで急ぐ必要もないと言うぐらい急ぎ走りで。
『早くしなきゃもう夕方だもん!!ママに怒られちゃうから早く』
幼い彼女がそう言い僕も少し歩く速度を速めた。
いつも遊んだ公園、夕方に傾きかけている赤茶の公園。その公園に目を向ける余裕も彼女に奪われてしまった。
『春〜早く!!早くしなきゃ!!おまじないの時間に間に合わないよ!!』
彼女はそう言いながら幼い足でまだ走っていた。
『もう、すぐそこだろ〜まだ間に合うよ』
彼女は僕の方に振り向き…小さな鉄の缶、つまり…お菓子の缶を僕に向けて見せた。中には二人を結ぶ契約書が入っている。
『そんな事言ってたら時間過ぎちゃうでしょ!!』
そう彼女が慌てた声色で叫びをあげるので僕は溜め息を一つ零した後また一つ足の速度を高めた。
二人して並んで…幼い足で走り辿り着いたのは公園の中心部分にある…おまじない木の場合だ。
『早く埋めなきゃ…時間ないよ!!』
彼女は慌ててポケットの中にあった子供が良く砂場で遊ぶスコップを取り出し、中腰に腰をまげおまじないの木の下に小さな穴を作っていく。なんとまあ…用意が良い事。
『スコップ忘れた』
『やっぱり…はい!!』
っと言うとなんとまあ用意が良い事に僕のスコップ…。本当に用意が良すぎる。
『はいはい』
そう言い僕も彼女と同じ体勢にし…二人で穴を掘っていく。
『これ位でいいだろ?早く埋めようよ』
『うん!!』
彼女は手からお菓子箱を離して…二人で掘った、小さくて…大きな穴にそれを落とした。
一つ、風が吹き抜け…おまじないの木を揺らす。そして…彼女が言った…。おまじないを…。
『契約書…私、雨宮理沙と』
『僕…桂木春は…』
『ここに契約する』

そしてまた、おまじないの木が揺れた。風も吹いていないのに…何かと同調した様に…。