「私が緊急で呼んだの。『あの子達』の世話を頼もうと思って」

修学旅行で同じ班として行動する千歳に説明しながら、アリスカは二人の生徒を指差す。

「龍太郎、あの子達連れてってあげて」

「あん?」

龍太郎が振り向いた先には。

「ふえぇえぇん…龍太郎ぉおぉ…」

情けない顔をして立つ顔見知りの女子生徒と、対照的に無表情の男子生徒が立っていた。

1年の黒部 美葉(くろべ みよう)と葉也の姉弟。

天神学園では言わずと知れた、ダイナミック方向音痴の双子。

「なんかさぁ…」

アリスカが苦笑いする。

「昨日下校するつもりで校門を潜って、夜通し歩いて今朝学園に戻ってきちゃったらしいよ?その上に修学旅行のバスに乗り込もうとしてたから、私が捕まえたの」

「高校生にもなって家に真っ直ぐ帰れねぇのか、お前らは」

龍太郎が額に手を当てた。