とはいえ、どんな信条やポリシーも空腹には勝てない。

「腹減ったなぁ…」

渡り廊下の手摺りにもたれ掛かり、溜息をつく龍太郎。

そこへ。

「そこな大うつけ」

檜扇片手に優雅な振る舞いで、一人の男子生徒が歩み寄ってきた。

河原院 融だ。

「どうした?普段から冴えぬ顔が、今日は一段と冴えぬでおじゃるな?」

「うるせぇ公家!」

とりあえず怒鳴ってみるものの、すきっ腹に大声が堪える。

「ほれほれ、かような蛮声を上げると空腹に沁みるでおじゃろう」

そう言って。

「これでも食うか?ん?」

融が龍太郎に差し出したのは、竹の皮に包んだ二つの塩にぎりだった。