「ヒロ、何考えてんの?」


電車に乗って帰る途中。

芽衣を前に座らせて、

オレは吊革を持って立つ。


「席、空いたよ。座れば?」

「ううん、えーの」

「…変なの。また筋トレ?」

「違うわ」

「あ、そ?」

「芽衣のこと正面から見てたいねん」

「…何?熱でもあんの??」


こんなノリで、いっつも茶化す。

完全にスルー。

空振り三振、アウト。


幼なじみってホンマに厄介や。

その一線を越えるのにも

アホほど時間かかるし。

手つなぐんかって

昔は普通にしとったけど、

今は意味が違ってきて

逆につなぎにくくなったし。


改札を通って見なれた道を歩く。

少し前を歩く芽衣。

手持ち無沙汰のその右手を

やっと捕まえた。

不自然に。


「……。」


ホラ、黙った。


「アホ、何を照れとんねん」

「はぁ!?違うし!!」


とか言いながら、カオ赤いし。

バレバレやん。

でも、ちゃんと握り返してくれる。