「……これ、寒かったら使え」

不意に彼は立ち止まり、私の方を振り向く。



ふわり。



首に巻いてくれればいいのに、彼は一度丁寧に畳んでから、マフラーを私に手渡す。

実に彼らしい。



深い闇の瞳は私だけを、そう私だけを映していた。



「今更」

私の首を包んだ彼のマフラーは、とても、温かい。





きっと、

存在さえあれば幾千の愛の囁きも穏やかな体温もいらない

なんて嘘だ。



純白の彼が、私は嫌い。



それでも私は、喜んで白に染まろう。

脆く澄んだ、この白に。
気高く濁った、この白に。