晒した肌を引っ掻く北風。
空腹時にも似た胃の違和感。
世界の果てから聞こえてくるような車が行き交う音。
洗練されている代わりに酷く味気ないイルミネーション。
墨でも流したみたいに星一つない漆黒の空。
一度も振り向かず、私の手を握るでもなく、ただ黙々と前を歩く彼。
つまらない。
雪の如く白い冷たさなら、私は泣いているのだろう。
だけど今は涙まで乾き切って。
頬が、喉が、肺が、心臓が。
苦しいと悲鳴を上げている。
そうか、冬とはこんなにも寒いのか。
渇き、乾き、渇く。
いっそ痛みで貫いてくれたなら、楽な幸福に手を伸ばせるのに。