果てしなく続く長い川を、少年は神様の涙なのだと思っていた。


沢山泣いたから沢山雨が降って、沢山地上で流れているのだと。


深緑のクロークを目深にかぶった少年は、新緑の森の梢に友達を見つけて駆けだした。


今度こそ捕まえてやろうと、終わらない鬼ごっこに付き合わされている黒い鳥は呆れた目をして枝を上る少年を眺めた。


鳥は喋れない。


危ないよ、と言うこともできなかった。


「うわあっ!」


手を掛けた小枝がぽっきり折れ、少年はそのまま幹を擦りながら落ちていく。


地面に頭をぶつけるか、そう思えば怖くなって、少年はぎゅっと目をつむった。



しかし背中も頭も痛くない。


数分間堪えていた少年は、ふと頬に当たる風に驚いて目を開けた。


「ガア、ガア」



黒い鳥が、枝に止まって少年を見ていた。


ほら見てみろよ、とでも言いたげに、鳥は少年の上を目配せする。


なんと奇跡的なことに、少年のクロークが枝に引っかかって、少年は宙づり状態にぶらぶらと枝にぶら下がっていた。



「あ……」



目を丸くする少年。


嘲笑うかのように、鳥はガアガアと掠れた声で鳴いた。



「…あはっ、あはははは!
…って、うわっ!」


大声で笑ったのが祟ったか、クロークを引っ掛けていた枝はぽっきり折れ、ついに少年は地面に落ちて頭を打ってしまった。


「いって…」


見上げれば、得意げに鳥が翼を羽ばたかせている。