古城のカラス




「君は生き物が死んだ後はどうなると思う」


一段と低い声でルークは問う。


「生まれ変わりはあると思うか」



「わかりません、死んだ経験なんてありませんから」


「賢明な応えだな。
しかしそれは間違いだよ、人は、少なくともこの時代の人間の殆どは死んだ経験がある。

何百億を超える命の数は、常に生死を繰り返して何度も何度も動き続ける、ちょうど水車に遊ばれる水のように。


しかし、一度水車から落ちて川に戻った命は、再び汲み上げられる際には記憶というものがいったん全て消去されるわけだ。


これをもって『人の命』は『死んだ』という。

つまりだ」



ルークは、長々と語った説明を飲み込め切れないセラの頭に手を置いた。


「君が所有している命は少なくとも数世紀前には既存していた。

君はそれを覚えていないだけだ」





前世というものを語る愚か者がいるだろう。


それが10人いれば10人は嘘吐きである。


でも100人いれば、そのうちの一人は『思いだしてしまった愚か者』なのだ。