「フレル・マーケティック、1721年8月9日生まれ、帝国出身。
1753年新大陸に渡り開発業で躍進、1760年先住民4名を虐殺し翌年先住民の青年によって刺殺される。
ガイゲリヒ・アンネンベルク、1521年12月29日生まれ。独国出身。
バイルシュイット大公に養子として引き取られ1571年爵位継承、1573年異端容疑を掛けられ刑死。
ボスコムント・アリヤ、1028年6月20日生まれ、印国出身。
1032年牛車に轢かれ死亡。
これ全部『俺が殺した人間たちだ』」
「どういうことでしょう」
セラは困惑するままに問う。
「そういうって、そのままだ」
ルークはいたって真面目くさって返答した、否、返答になっていないのをよく自覚している。
「俺は11世紀に印国の少年を轢き殺し、15世紀に英国の裁判官として海賊を処刑、翌世紀に独国で再び裁判官となり公爵を処刑、そして18世紀に新大陸の先住民として生まれ当時の親兄妹を殺害した男をナイフで刺し殺した」
「そんな…ご冗談ですよね」
「まさか。
よく見てみろ、書いてある本はどれもこの俺の筆跡だ」
そう言って三冊の本を寄越した。
その筆跡はまさしく同一人物の物であり、綴られた書物それぞれに年代の差があることもまた明白であった。


