地下四階、書庫。
ランタンの炎が連鎖して部屋中に灯りが点る。
照らされた扉の奥は、相変わらず石造りの部屋と名目通り木で組まれた本棚がズラリと並ぶ紛れもない書庫であった。
ただ、その奥行きと幅が、屋敷の大広間やダイニング他どの部屋よりも広いということだけは判断できた。
「すごい…」
感激の意を表せば、ルークは横目でちらりとセラを捕えて、その本棚にぎっしり並べられた中の一冊を手にして開いた。
「ジョン・ターナー、1398年四月十日生まれ、英国出身」
「……?」
1398年なんて何世紀前の人物なのだろう。
学の無いセラは、その名前を歴史の偉人かもしくは帝国の重要人物であったのかと予想した。
少し厚めの本を、ルークは何頁か飛ばしながら続けて読み上げる。
「1410年商人であった父親と共に帝国へ移住、1432年商船ドリップ号の船員となり1440年船長就任、翌年海賊へ転身し1445年逮捕、さらに翌年死罪判決により死刑」
「………どなたです?」
「忘れもしない、俺が片腕を落して逮捕された間抜けな海賊風情だ」
「ルーク様が…?
でも、この人は13世紀の人じゃ…」
応えるかわりに、ルークは他に数冊の書物を引っ張り出して同じように読み上げた。


