「ふ…そうだな、誰に語っても面白くないしそもそも見世物ではないと思っていたから余計なことは黙っていたが、しかし気が向いたので案内しよう。
おいで」
部屋の中ではとても長いと思しきマントを翻して踵を返した。
裏地の赤が妖艶に舞う。
「父さん、どちらへ」
「地下書庫だ」
「いいんですか!?」
「減って困る物は無い」
ルークは閲覧室の隅の床を、革靴の踵でコツコツと二度叩いた。
その後に滑車が回転するようなカラカラという渇いた音。
次に部屋の四分の一を占める床に亀裂が入り、主を乗せてずんずんと下に降りていく。
「乗れ」
顎でしゃくって足元を示された。
ホムラは彼女の手を引いて、さあ、と導きながら進む。
「足元に気を付けて下さい」
既に50センチほど沈みこんだ床に飛び乗って、何処へかは知らないが、何をかは知らないが、暗い地下への通り道をゆっくりと降りて行った。


