屋敷と呼ぶが、実際は城である。


壮麗な建築技術を以て建てられた古城はそれよりも高い防壁に囲まれ、その壁の向こうは断崖絶壁。


時々城の空には禿鷹が舞う。


弧を描く猛禽の姿を眺めながら、古城の中庭にある木製のブランコに揺られてぼんやりと曖昧な意識を泳がせている。


高く上がった太陽の灯りが心地よく、そのまま眠ってしまいたいくらいだ。



ブランコの傍にはクロスがかけられた白い丸テーブルが置かれ、手の付けられていないティーセットが並んでいる。


カップに入った紅茶は湯気をたてて揺れ、他にスコーンやブラウニー、マフィン、ベーグル、サンドウィッチ等々が見栄え良く飾られている。



口に運ぶ気力は無いようだ。




「午後からは雨が降るらしいですよ」



ブラウニーを半分に割って、ホムラは片方を齧った。


意外に美味しいということに気付き、目を丸くしている。



「そう、ですか」


「はい。
だから午後には中を案内しますね」



ホムラは努めて明るく振る舞った。