「どうして私を助けましたか」



去ろうとする広い背中に、射るような痛々しい言葉が掛かった。


憤慨しているように聞こえる。



「泉が汚れるからですか。
それなら、土に埋めるか、燃やすか、あるいは誰かに始末をさせればよかった。

連れ帰って面倒を背負うくらいなら」



「は、まるで死にたかったみたいな言い方だな」


「死ぬ覚悟はありました」



でも、と、言葉を切って彼女は拳に目一杯の力を込めた。


悔しさか、でもそれを悔しいと表せば少しだけ語弊がある。



「それをあなたに壊されました、ひどく簡単に」



「…………ああ」



ルークが振り返ると、彼は驚くほど能面めいた無表情でいた。


紅い両眼は歪みも無く平然たる色をして、無邪気に彼女を映している。




「食事はホムラが後で持ってくる。」



まるで興味もない。


目がそう応えていた。


憤慨したセラの返答を待たずに、ルークは扉の向こうへと消えてしまった。