ホムラの焦りを宥め、『父さん』と呼び慕われている男はやがてセラに視線を向けた。


そういう訳だから、と気まずいらしい表情をして頬を指先でポリポリかいた。


彼のその仕草は少し変わっていて、薬指で爪をたてている。


「暫くはこの部屋で大人しくして。
これが面倒見るから」



薬指で指名されたホムラは、先ほどとは違い耳が垂れそうな不安げな表情で頭を下げる。


「でも、無償で厄介になるだなんて」


「現状では大人しくしてもらうのが一番厄介じゃないから、とにかくそうして」


「はあ、では」



名前を教えて頂けないか、と、せめてそれを尋ねると彼はまた薬指で頬をかく。



「ルーク」


「ルーク様」


「『烏』だよ」