「ここの敷地は、見ればわかるが防壁でぐるっと囲まれていて、出入りは正面の門だけなんだが、俺の意志では開かないんだ」


門が開くのは満月の一夜だけ。


昨夜がその満月の夜だったわけだから、次に門が開くのは1ヶ月待たなければならない。


「そんな…私、それまでどうすれば…」


「どうすればって、此処にいるしか無いだろ」


「父さん!」


ホムラは男の膝にすがるようにして、泣きそうな声を荒げた。



「1ヶ月も人間を匿うつもりですか!
無理ですよ、そんなの、経験無いのに!」


「経験は心配無い。
もう客に頼んであるから」


「何を!?」


「今日来るのは、あのひねくれ侯爵様だからね」



ふぅ、とため息をついて男はホムラの頭を撫でた。


それだけで安心剤になるらしい、ホムラは少しホッと息をついて落ち着きを戻した。


しかし。



「あの人嫌いです…」


「そうだろうな」