古城のカラス



そして現れたのは、昨夜の色白で無機質な瞳をしたあの男。


ホムラを腕に携えて半ば鬱陶しそうな表情のまま、セラの姿を認めて「ああ」と声を漏らした。


「起きたんだ」


「父さん、セラ姉さんって言うんだって!」


なにが、と疑問符を浮かべて男は首を傾げるが、すぐに彼女のことだと解ったらしい。



「そう。」


それだけ頷いて、あとは会話もする気はなさそうに、部屋の隅に置き去りにされた襤褸い椅子に腰を下ろした。



「あの、助けて下さったんですか」



恐る恐るセラは男に尋ねる。


紅い瞳がぼんやりセラを捕らえ、細められた。



「連れ帰られて手当てされたことを『助けた』って定義するなら、そうなんじゃない」


「そうですか…あ、有難うございます」



礼の言葉に、男はまた首を傾げた。