古城のカラス




そう悩みに悩んでいる間、部屋にある一つだけの扉の奥から靴音がした。

固く冷たい音――…かつてのセラの主人のモノに似た聞きがたい音であり、セラは反射的に耳を塞いだ。



「父さんだっ!」


ホムラは嬉しそうにパッと笑顔になり、走って扉を開けた。



「父さんっ!
父さん父さん父さんっ!」


ホムラに引き摺られるようにして黒い袖の腕が見えた。