セラ姉さん、セラ姉さんと少年は単語暗記のように繰り返す。
物別れが激しいのか、もしくは、たかが名前を教えてくれたのが嬉しいのか。
「ボク、ホムラ。
ホムラだよ」
「ホムラ……さん?」
「呼び捨てでいいよ、堅苦しいの嫌いだから」
そうは言われても、初対面の人間にむかっていきなり呼び捨てできるほどの度胸は持ち合わせておらず。
セラは返事をするにあたり困った顔になった。
「そもそもボクはその辺に転がった存在分子を寄せ集めていくつか機能を付け足した簡易生命体でしかないわけだから、立場でいえばボクがここの住人だとしてもセラ姉さんの方が目上ととらなきゃいけないわけよ。」
「……はい?」
「あっ、いやいや、独り言。
ともかく、『さん』付けして呼ばせてたらお父さんに怒られちゃうから。
呼び捨てで」
「はぁ………」


