《お願いでございます! わたくしでもこれよりは侵入を禁じられているのです。これ以上はなりません!》

 森番はそう言いながら、那知の周りを飛び跳ねる。あまりの勢いに草が舞い飛ぶ程だった。

 那知は足元で必死に鳴く森番の姿を見ている。

 しかし那知には森番の言葉を理解する事は出来ないだろう。

 なぜなら彼に見えている森番は、子リスの姿でキーキーと鳴いているとしか聞こえなかったからだ。
 
 言葉は通じなくても子リスが何を訴えているのか分かっていた。

 入るな、と言っているんだろうな。と那知は思う。

 ――この森は天界の幾多とある森の中でも並びない美しさを持つ森である。

 しかし美し過ぎるからこそなのか、危険を伴う場所でもあった。
 聖域であるが故に過去に幾度も神聖な儀式を行なっている。

 莫大な魔力を持ちいる儀式は大地を傷付け、その傷痕は空間を侵食していた。
 
 空間は天界から切り離され、天界で唯一の禁断地となった。
 
 だからこそ森番は必死になり、那知を止めようとしているのだ。