殺されたがり

だが世界は残酷だった。

何百、何万と殺されているこの世界で彼は殺されなかった。

どれだけ事故にあいたいと願っても、

通り魔にあいたいと願っても、

車は安全に運転していて、
人も普通に日々を過ごしていた。

彼はある意味運が悪かったのだ。

自ら死ねない臆病な彼にとって待つことがただ一つの方法。

だから彼は毎日この世界に問い掛ける。

「なぁ、殺してくれない?」





世界は今日も彼を殺さない。