「なぁ、殺してくれない?」

その男は言った。

なにか失敗したわけではない。

あるいは未来に絶望したわけでもない。

ただ「ペンかしてくれない?」とでも言うような気軽さで。

ただ殺されたがった。

そう言っている彼の瞳はどこまでも澄んでいる。

殺してなんて言うような人間の目ではない。

あまりにも普通過ぎる目。

しかし彼は本気だった。

純粋に心の底から殺されたいと渇望した。