あたしの“大嫌い”な男の顔があったんだから。 あたしが見た白地は白のカッターシャツ。 赤い何かは少し緩んだネクタイ。 細いコードみたいなのは音楽プレイヤー。 本当に今日は最悪。 朝からこんな満員電車には乗るし、嫌いな男には触っちゃうし。 あたし、運ない。 「あの、足とかくじいてない?」 その男は片方の音楽プレイヤーを耳から外しながらあたしに尋ねてきた。 「すみません。話しかけないで下さい」 あたしはその男の顔を見なくていいように、男に背を向けて吊革を掴んだ。