「キムって呼んで。」


ナンパされたときのために用意されていた名前を教えてあげる。


「キム?韓国人みたいな名前だな。」


そう笑ってペンをポケットに入れると、書き終えたノートのページを破って私に差し出された。


「オレはスン。あとで連絡してこいよ。」


私に負けてないくらい韓国人みたいな名前じゃん。


差し出された紙には、走り書きでケー番とメアドが書かれていた。


私が顔を上げたときには、もうその男の姿は路地を曲がって見えなくなっていた。